肉離れにアイシングって必要なんでしょうか?
今までは受傷直後の対応としてRICEが推奨されていました。
ただ、最近では肉離れに対するアイシングが治癒を遅らせる可能性があると言われています。
そうなんですね。詳しく教えてください。
この記事では肉離れに対するアイシングについて解説します。
アイシング(冷却)とは?
まずはアイシングについて説明します。
そんなこと知っているよ!という方は読み飛ばしてください。
- 氷や氷水、保冷剤などを使用して患部を冷却すること
- 方法:15~20分冷却→1~2時間空ける→15~20分冷却
- 凍傷に注意が必要
アイシングとは氷や氷水、保冷剤などを使用して患部を冷却することを言います。
怪我による炎症反応は48~72時間程度継続されると言われています。
この炎症反応を抑えるためにアイシングを実施することが推奨されてきました。
具体的には15~20分程度患部を冷却したのち、1~2時間程度時間を空けて再度冷却するということを繰り返します。
アイシングで注意しなくてはいけないのが凍傷のリスクです。
必ず実施する場所に感覚障害がないかどうか確認し、初めて実施する場合にはこまめに皮膚の状態をチェックしながら行う必要があります。
なぜ、肉離れにアイシングは良くないのか?
2021年の研究で肉離れに対するアイシングは筋損傷の治癒を遅らせるという結果がでました。
少し専門的な内容になりますが、筋損傷後のアイシングは下記のようなことを引き起こすことが明らかになりました。
- 壊死した筋線維への多核細胞や単核細胞の浸潤を遅延・減衰させて除去を遅らせる
- マクロファージ表現型動態やTNF-α/IL-10等の炎症関連因子の時間経過発現を変化
- 再生領域におけるPax7þ筋原性細胞の出現を遅らせる
- 筋肉の再生不良を引き起こす
簡単にまとめると、肉離れ後のアイシングは壊死した筋線維の除去やマクロファージを撹乱させ、筋の再生効率を鈍らせることが示唆されました。
さらに簡単に言うと、アイシングによって「壊れた筋を掃除するための機能が鈍り、筋肉の再生も遅れる」ということですね。
詳しくは下記の文献を参照してもらえればと思います。
Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice.
Masato Kawashima et al.J Appl Physiol 130: 1410–1420, 2021
また、RICEの提唱者であるDr.MirkinがNATA(National Athletic Trainers’Association:全米アスレティックトレーナーズ協会)の2018年カンファレンスにおいて「RICE法は望ましい治療法ではない」とも発言しています。
アイシングはスポーツ現場の悪い風習
何でもかんでもアイシングは良くないと考えてます。
- 肉離れでも骨折でも靭帯損傷でもアイシング
- 急性痛でも慢性痛でもアイシング
- 捻挫した直後はアイシング
- 捻挫して2週間経過しても慢性的な痛みがあるからアイシング
- 試合で投げたからアイシング
ただし、ここで勘違いして欲しくないのは「アイシング=悪」では無いということです。
痛み=アイシングまたは怪我=アイシングとなってしまっていることが良くないと考えています。
「アイシングによって痛みが増した」とか「アイシングによって治りが悪くなっている気がする」ということは昔からあったはずです。
これは全ての治療方法に言えることだと思いますが、異なる原因で起きた怪我が一つの方法で解決するということに違和感を感じて欲しいです。
まとめ
肉離れに対するアイシングについてまとめます。
- アイシングは筋肉の再生を遅らせる可能性あり
- 「アイシング=悪」では無い
- 何でもかんでもアイシングするのをやめる
ありがとうございました!